sekiwataruの日記

Ph.D(filosofia)のソリロキア

思想

無神論者の読む『聖書』ー『ルカ福音書』2:14「地に平和」【後編】

地に平和、すなわち抽象的観念の場でではなく、実際に人間が生きているその現場でこそ平和を遂行する。『ルカ福音書』2:14が語る平和はまさにそれを基点としているのであって暗夜を放浪するが如く彷徨する人間に負わされた苦痛を除去する為にこそ平和を語る…

無神論者の読む『聖書』ー『ルカ福音書』2:14「地に平和」【前編】

予め個人的立場を明確にしておくなら、"神"という概念は人間が考え出した観念に過ぎぬと見なすものです。何らかの経験的表象から抽出されたのではなく、単に"完全なる存在"という概念を通俗化したものです。だから、人の口に上る"神"とは、それを語る人間の…

【書評】ヤハマン著木場深定訳『カントの生涯』理想社1978年。

普段考えていることと違う内容を模索するのは、集中的に時間が取れないとなかなかうまくいかないので、ブログ記事をお休みしてAmazonさんでレビューするのが私的な活動でしたが、今回はそのAmazonさんに書誌情報が掲載されているのがどれだかいまいち分から…

【論考】初期マルクスによる阿片としての宗教ー第5回

※第5回です。公開した後でも、ちょっと手を入れて修正します、すいません。今回の話が長くなりましたので、あともう一回だけやります。結びにかえて、マルクス宗教批判の射程 今まで、「宗教は民衆の阿片である」というマルクスの宗教批判を巡って、「マルク…

【論考】初期マルクスによる阿片としての宗教ー第4回

※第4回、続きです。とりとめない文章ですいません。寒い日が続きますのでお体にはお気をつけて。諸事情により無駄な読書をしていましたが何の役にも立ちそうもなく、まぁそういうこともありますなと気分を変えて、以下でマルクスについて考えていきたいと思…

【論考】初期マルクスによる阿片としての宗教ー第2回

※第2回、続きです。2、「宗教は阿片」をめぐる解釈 以下で見ていくことにしますが、マルクス主義を自認する方々の中でも良質的な人々でさえ、いや、というよりも良質的な人々の方が、「マルクスは宗教を良い人と言っている」という解釈へ向かう場合がありま…

【論考】初期マルクスによる阿片としての宗教ー第1回

※只の研究ノートとして某国営放送でやっている『刑事コロンボ』を観ながら軽い気持ちで書き初めてみたら、ちょっと長くなりそうなので何回かに区分しながら綴っていきたいと思います。一応、文献なども文中で紹介はしていますが、論文ではないので脚注の類い…

【書評・再録】Karl Marx Das Reich Der Freiheit, herausgegeben von Kurt Lhotzky, Anaconda, 2018

※以下は、Amazonレビューに2020年12月3日付けで掲載されたものの再録です。 本書は、マルクスの生涯に渡る著述活動の中で「自由」を語る場面を年代順に掲載したアンソロジーとなっています。マルクスの主要著作からは勿論のこと、ジャーナリスティックな論考…

【書評】廣松渉『青年マルクス論』平凡社1980年

著名な哲学者による若い頃のマルクスについての論述です。手元にあるのは、平凡社刊の1980年発行の初版5刷ですので、最新版とは細かい所で差異があるかもしれませんが引用はそこからしてます、すいません。本書は詳細な資料により、若いマルクスの思想を提示…